僕はコーヒーが大好きです。
よくお客さんに「なぜ珈琲屋さんを始めたのですか?」と聞かれますが、それが答えです。
おそらく、大体の自家焙煎店の店主はそう答えると思います。ただ、一国一城の主として、また、生業としてコーヒーと携わっていくことは容易ではありません。
コーヒーが純粋に好きで、焙煎方法、入れ方など徹底的に研究することは当たり前ですが、それ以外にお店を運営していくという舵取りはまた別の能力を要するからです。
一応当店は16年目になり、運営してこられましたが、僕は数字を弾いたりすることが好きではありません。
ただ、どうしてもお店の状態を把握しておかないといけないので、しっかり数字は見ています。
開業する前、人生の先輩方から「好きを仕事にすると楽しいだけではない」と聞かされました。
始めてみて分かりましたが、これは真なり。本当にその言葉の通りです。
立ち上げて間もない頃は売上が伸びず、寝られない日々が続いたり、食事が喉を通らなかったり。
オリジナルブレンドの発注の納期が迫れば、うなされて起きたり。
お歳暮の時期は納品が間に合うか、いつも心が落ち着きません。
そして、開業以降24時間365日欠かす事なく、数字が頭を駆け巡っています。
お店を立ちあげたからには自分のお給料は自分で稼いでいかなければなりません。
こういったところが「楽しいだけではない」ということなのだと分かります。
ただ、僕はありがたいことに開業した頃よりもコーヒーが好きになっています。知れば知るほど楽しい世界です。
そして、まだまだ知りたい。色々な豆と出会いたい。
僕は好きを仕事にしてご飯を食べていけているので、とても幸せな状況です。
好きを仕事にすると、大変なことが多く楽しいだけではないですが、好きだからこそ頑張れるし、さらに楽しめる視点が増えます。
16年目の今でも焙煎を失敗すれば、趣味で焼いていたときとは違い、本気で「チクショー!!」と思います。その反面お客さんが喜んでくれていれば、僕も倍嬉しい。
数年前に小学生の子が社会科見学で当店に来てくれたのですが、そのなかの質問で「ずっとコーヒーに携わっていて、飽きませんか?」と聞かれました。
僕は間髪入れず「飽きないよ。むしろ、もっと知りたい」と答えました。僕は小さい頃から、自営している両親を見てきて仕事を楽しむ大人に憧れていたので、即答出来たことに我ながらハンサムな答えだと思いました。笑
好きを仕事にすることは楽しいだけではない、ただ好きだからこそ大変なことも頑張ってやっていくことが出来るし楽しめる。
若輩者ですが今の僕の答えです。