僕は自家焙煎店を営んで11年目になりましたが、愛飲歴は中学生からなので25年ほどになりました。
趣味が高じて手回し焙煎機を買い、炒りはじめたのがきっかけで自家焙煎店をしました。
今でも様々なお店に伺い珈琲を楽しみます。
時に嫉妬するほどの絶妙な煎りあげをしている珈琲に出会うことがあり、改めてプロの焙煎士の技術を見せられることがあります。
珈琲の焙煎は単純なものです。
なぜなら「焼く」以外の事を1つとして行わないからです。
ただ、スペシャルティコーヒーを扱うお店であれば、まず素材(生豆)をしっかり選んで提供することに相当な時間を費やします。
焙煎は一括りにして正解、不正解はなく、そのコーヒーを求めるお客さんが着いていればどの焙煎も正解といえます。
ですが、プロ(巧み)の焙煎は意図があり、アマ(下手な)の焙煎には一貫した意図がありません。
焙煎はそのお店の焙煎士が、流行、自身の嗜好等で煎りあげています。
コーヒーの味わいは酸味、甘味、苦味、コク、香りと味わいを楽しめますが、どのように煎りあげるかで味わいは変わります。
例えば大体のブラジルの豆でいうとナッティな味わいが特徴なので中深煎りぐらいで煎りあげけていたりするのですが、この場合深く煎るにつれて酸味が失われていきます。
巧みな焙煎をする人は酸味をほんのり残しつつ、ナッティさも出てくるギリギリのポイントで煎りあげていたりします。
これ1つで巧みとはいえませんが、そこのお店の他の銘柄を飲んでも、それを強く感じたりするものなのです。
ざっくりと書いてしまって伝わりにくいと思いますが、アマチュアの方には「ここの焙煎士の方はこの香味のポイントを狙っている」という意図がありません。
つまり提供したい珈琲の香味の軸が無いのです。
というのも最近出会った違う業種の方が焙煎した珈琲の巧みさに思わず感動しました。
たまたま友人が誰が焙煎したコーヒーとは言わずにその方のコーヒーを飲ませてくれたのですが、基本は深煎り(フレンチ程度)で何回飲んでも色々な銘柄を飲んでも絶妙なポイントで煎りあげている。
しかも良質な豆を選んでいる。すなわち品質をしっかり見極められているのです。
焙煎度はフレンチと偏り、表現の幅広さはありませんがコロンビア系であればほのかに酸味は残しつつ深煎りの苦みの出てくるポイントで抑えていたり、ブラジルのナッティさがギリギリ残る程度の深煎りに仕上げていたりと絶妙なのです。
友人にあまりにも捉え方が上手いので「素人じゃないでしょ?」と聞くと「実は○○の社長(有名スイーツ店)」と教えてくれました。
当たり前ですが味の捉え方が的確なのです。
その社長さんは趣味が高じて豆を焙煎すようになったそうそうです。
こうもプロとはすごい物なのかと再認識しました。